第6回目の成長期のスポーツ障害は、「成長期の肘障害」(肘の内側障害、外側障害)について説明させていただきます。

成長期の肘障害とは

肘の内側に出やすい障害と外側に出やすい障害があります。


① 肘内側の障害:上腕骨内側上顆障害  

投球動作などで動かされた筋肉(の腱)が、付着部である肘の内側の弱い成長軟骨(骨端線)を繰り返し強く牽引することで炎症を起こします。

放置すると肘の内側の痛みが徐々に増強し、肘の曲げ伸ばしが困難になる場合や成長軟骨が剥離することもあります。

野球などの投球動作を行う子どもに多い症状のため、別名リトルリーグ肘とも言われます。


② 肘外側の障害:離断性骨軟骨炎    

肘の外側の骨が繰り返し衝突したり、力が加わることで骨軟骨がはがれて起こるのが離断性骨軟骨炎です。

内側の障害に比べて例は少ないですが、これも野球の投球動作で起こることがあるため、外側の野球肘とも呼ばれます。

剥離した(はがれた)軟骨が肘の隙間に挟まってしまうと痛みが生じたり、著しく肘の動きが制限される場合があります。



その原因

成長期の子どもは、大人に比べて骨や軟骨が弱いため、肘の同じ部分に繰り返し力が加わることで痛みが生じたり、関節の動きが悪くなることがあります。

体の出来上がっていない成長期に野球の投球(動作)を過度に繰り返すこと(投げ過ぎ、良くないフォームで投げる、変化球ばかり投げるなど)も、肘障害の要因になり得ます。

治療法について

①、②ともに患部の安静を優先させ、肘を使う運動を休止(減少)させ、痛みが治まってきたら肘を使った運動を徐々に再開していきます。

炎症の進行を抑えるために、アイシングや電気治療などの物理療法を行ったり、湿布などを貼付する方法があります。


②については、競技が野球の場合、一定期間投球を停止する必要があります。期間は剥離の程度により異なりますが、少なくとも半年程度は症状の経過を観察しながら肘の運動(投球動作)を控えます。

ケースによっては剥離した軟骨を手術で除去した方が良い場合もありますが、手術を行うかどうかの判断は症状だけでなく「今後の競技への取り組み方」や「どういう形で競技復帰をしたいのか」といった今後のライフスタイルと照らし合わせながら判断する必要があります。


スポーツへの復帰については、経過の確認が必要ですので医師の判断を仰いでください。

保存的療法と理学療法士によるリハビリを併用して行い、肘の使用頻度、強度、運動のフォーム、体のバランスなどの指導を受けながら徐々に運動復帰を目指します。

運動復帰した後は、怪我の再発がないようウォーミングアップ、クーリングダウンなどの体のセルフケアとパフォーマンスの改善による怪我の予防を心がけましょう。

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今回ご紹介した リトルリーグ肘、離断性骨軟骨炎の他にも、代表的な肘のスポーツ障害として、上腕骨内側上顆炎(野球肘、ゴルフ肘)、上腕骨外側上顆炎(テニス肘)などがありますが、これらは子どもだけでなく、成人・大人がスポーツをプレーしたり、肘の酷使をしてもなる可能性があるため、今回の成長期のスポーツ障害では省略させていただきます。

過去のブログ関連記事を紹介させていただきますので、よければ参考になさって下さい。

>> 野球における投球数と成長期における障害について

>> 肘が痛いな。テニス肘?スマホ肘?そんな時の対処法


子ども(または大人)の肘のスポーツ障害はみひらRクリニックまで。金沢市笠舞3丁目交差点すぐの整形外科専門クリニックです。