競歩にみるエネルギー効率と燃費
2021年09月06日
競歩で日本人選手がメダル獲得!
先般の東京オリンピックをTV観戦された方は多いと思いますが、私もたまたま50キロメートル競歩を見る機会がありました。
結果として日本人選手はこの競技(50km競歩)でメダルを手にすることは出来ませんでしたが、競歩という競技の特性上、骨格が華奢な日本人でも体の使い方やトレーニングの方法次第では世界のトップといい勝負が出来るのではないかと思いました。
実際に20キロメートル競歩では、池田尚希選手と山西利一選手がそれぞれ銀メダルと銅メダルを獲得しました。同種目での日本人選手のメダルは初とのことです。
競歩のルールが、いろいろとすごい
競歩という競技は、かなりユニークなルールを設定していると思います。
まず、歩くということが大前提になっているので、両足が地面から離れる瞬間があってはなりません。短距離走やランニングの走る動作と違って、体が宙に浮いた瞬間があってはダメということです。
これらの禁則事項は「ロス・オブ・コンタクト」や「ベント・ニー」など、競技のルールとして厳格に定められていて、選手のフォームにこれらの違反がないか複数の審判員が常にチェックし、もし違反が指摘されレッドカードが蓄積すると、最悪の場合失格となってしまいます。
「最も過酷な陸上競技」と呼ばれ
この制限された状態で、トップ選手たちは1kmを4分を切るタイムで歩くというのですから、非常に驚かされます。
普段ランニングをされる方ならわかると思いますが、ジョギングで1kmを5分ペースだと結構なスピードだと感じるはずです。
競歩もマラソン(あるいは短距離)などの競技も、「決められた距離を、できるだけ短い時間で到達する」という根本の目的は同じなのですが、競歩はルールとして運動とエネルギーの効率性を排除している点で、他の陸上競技と完全に質が異なります。
このように、競歩は体力的にもルールの厳格さ的にも大変過酷な競技であり、そのハードさから「最も過酷な陸上競技」と呼ばれることもあるようです。
私も以前体育館を競歩でひたすら往復するトレーニングしたことがありますが、わずか10分間で心肺機能も体力もかなり疲労した記憶があります。
燃費が悪い競歩のフォーム
人が歩行する場合、時速7kmの時点から早歩きよりも走ったほうがエネルギーの効率が上がるそうです。
それは、人(や動物)の足にはアキレス腱のようにバネの役割を果たす組織があるためですが、競歩ではこのバネの力をあえて制限するようなフォームにルールを設定しているので、体には非常に過酷で非合理(?)なスポーツといえます。
ちなみにアキレス腱の話でいえば、動物のカンガルーなどは非常に発達した腱を持っていますので、弾むようにジャンプしながら高速で移動することができます。
バネの力を使わず、脚の運びだけで体を前に進める競歩がいかに大変で非効率かを、自動車で例えると「燃費が悪い」ということになります。
自動車などでは、ガソリン1リットル当たりの走行距離(km)を「燃費(燃料消費率)」で表現しますが、競歩は燃費を非常に悪く設定した状態でスピードを競うという、なんとも矛盾した競技だといえます。
競歩をトレーニングのアクセントに
逆に考えると、「燃費が悪い」ということは体力の消耗に比してエネルギー消費が大きいということですので、脂肪燃焼などのダイエット効果を目的として実践するのは1つの方法だと考えられます。
しかし、競歩のフォームは見た目がユニークですので、ウォーキング感覚で気軽に行うには道行く人の目が気になるかもしれませんね。
また、普段のランニングやウォーキングに変化を取り入れる目的で、競歩のようなフォームを取り入れるのは効果的だと思います。
その他にも、普段よりペースを速める早歩きや、少しストライド(歩幅)を広げた大股歩きのようなフォームで歩くのも面白いと思います。
これらのフォームを実践してみると、普段のウォーキングとは運動の強度や使う筋肉が違ってくるので、負荷のかかるポイントや疲労する箇所も異なってきます。
もし普段のランニングやウォーキングが少しマンネリ化していて、トレーニングの変化や刺激を求めているならば、これらの方法もトレーニングの1つのヒントになります。
行った後の体の反応を確かめながら、自分の目的にあったフォームやプログラムを試行錯誤してみてはいかがでしょうか。
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