北京オリンピックの盛り上がりも含め、ウィンタースポーツが盛んなシーズンです。

週末にゲレンデでスキーやスノーボードを楽しまれる方も多いと思います。

今回は当院にも来院が多い、スノーボードでの外傷(ケガ)についてご説明したいと思います。


スノーボードは板(ボード)に両足を固定し、体を横向きにして雪上を滑るため、転倒した時に受け身が取りにくい特徴があります。

また、両足が揃った状態で転倒すると、初心者の方は頭部・顔面から雪面に倒れたり、尻もちをつく形でお尻や腰を雪面に強打するケースが多いでしょう。

一方、中・上級者の方やハーフパイプなどを楽しまれる方でも、滑走スピードが上がったり、ジャンプの着地の際などの転倒リスクが高まりますので、怪我をする危険は常にあります。

スノーボードの転倒で生じる外傷(怪我)

【 打撲 】
いわゆる打ち身です。全身を打撲する可能性がありますが、脇腹などを強打した場合には、肋骨を痛めるケースがありますので、呼吸や咳、くしゃみなどで背中や脇腹に痛みが響く場合はレントゲンなどで骨折の有無を確認した方が良いでしょう。

また、お尻から転んで尻もちをついた場合、多くは臀部の打撲として数日間で痛みがおさまると思いますが、お尻の中心部分の痛みがなかなか取れない場合(イスに座った時、仰向けに寝た時に強い痛みを感じる)、尾骨が骨折している可能性がありますので、整形外科を受診してレントゲン撮影を行った方が良いでしょう。

【 骨折 】
上記の肋骨、尾骨の他にもスノーボードの転倒で骨折しやすい箇所があります。
それは、手首の周辺です。転んだ際にとっさに手をつくことが多いと思いますが、この時に手根骨という手首の細かい骨や前腕骨の先端に負荷がかかって骨折していることがあります。

同様に肩関節や鎖骨も骨折する危険性がありますが、これらの骨折は急斜面での転倒やエアー台から落下するなど、かなり強い衝撃が加わった場合に起こりうる外傷ですので、これらの場合もし骨折に至らなくとも脱臼や靭帯を損傷している可能性があります。肘の関節についても同様です。

手首・肘・肩などに強い痛みや腫れなどの症状がはっきり出ている場合は、患部を軽く固定して整形外科または救急外来を訪れて下さい。

【 靭帯・半月板の損傷 】
膝(の関節)もスノーボードで痛めやすい部位です。肘、肩鎖関節などと同様に、靭帯(や半月板)を痛める可能性があります。
両足(首)が板に固定されているので、膝関節への力(横方向からの力や捻転する力)は、うまく分散しにくくなっています。
靭帯、半月板を痛めると、痛みで全く動けない場合だけでなく、膝に力が入りにくい場合もありますので、整形外科でレントゲン、MRI検査をして受傷部位を確認する必要があります。
まれに膝蓋骨(膝のお皿)が脱臼しているケースも見られます。

足関節はブーツ固定のため受傷しづらい部分ですが、足首の靭帯を損傷することがあります。

【 頭部・頸部の外傷 】
頭部を強く打って意識がない場合、脳震盪を起こしていたり、脳内で出血している可能性もありますので、救急搬送して脳神経外科の受診が必要な場合があります。
お連れの方が受傷した場合や、近くで転倒して動けない人がいる場合には、ゲレンデのスタッフを呼び救急時の対応を行ってもらって下さい。

また、頭部を打撲した場合、意識がはっきりしていてもしばらく時間が経過してから頭痛、めまい、吐き気などの症状が出てくる場合があります。
転倒後はスノーボードを中断し、しばらく安静にして様子を見てから当日はそのまま帰宅するのが良いでしょう。帰宅時には出来れば車の運転は控えるようにして下さい。
経過を観察し、当日、翌日などに頭痛、めまい、吐き気などの症状が強い場合には、脳神経外科の外来を受診して検査を受けるようにして下さい。

同じく転倒の際に首(頸部)を痛めることもあります。交通事故のむち打ちのような状態になり、首や肩に痛みやつっぱり感が出ることがあります。
翌日になりこの痛みが増すケースもあり、腕(上肢)のしびれや頭痛、吐き気などを伴う場合は頸椎(及び神経)を痛めている可能性がありますので、整形外科を受診して検査をするようにして下さい。

怪我をしないルーティーンを

スノーボードに代表されるウィンタースポーツでは、怪我をせずにレジャーを楽しむことが一番良いですが、もし怪我をしても対応できるよう準備しておくことも大切です。

テーピングやアイシングの準備、最寄りの整形外科、救急外来をあらかじめ調べておくなどしておくと心強いですね。


また、スノーボードをする前後の体のケアも大切です。ウォーミングアップ、クールダウンをしっかりルーティーンとして取り入れるようにして下さい。


現在「人類史上最高難度のルーティーン」が出来るのは平野歩夢選手(スノーボード)だけですが、運動前後のストレッチなどは、普段からのルーティーンとして誰でも出来ることなので、是非取り入れてみて下さい。


本日は長母趾屈筋腱溝を通る長母指屈筋腱の短軸画像を紹介致します。
距骨の内側結節と外側結節の間に長母趾屈筋腱溝があり、長母趾屈筋腱が通るのが観察できます。
長母趾屈筋腱の腹側には後脛骨動静脈や脛骨神経があります。



本日は外側腓腹皮神経、内側腓腹皮神経が合流し、腓腹神経となる様子の画像を紹介致します。
外側腓腹皮神経と内側腓腹皮神経が合流する前に、内側腓腹皮神経は外側腓腹皮神経の深層に位置します。少し遠位にプローブ操作すると、一塊し腓腹神経となります。



本日は浅腓骨神経が中間足背皮神経と内側足背皮神経に分かれる前の短軸画像と、分岐後の画像を紹介致します。
下腿の遠位で分岐し、末梢にいくことで更に両神経の間隔が遠ざかる様子が確認できます。




FIFAワールドカップ・カタール大会が今年11月に開催予定ですが、その予選もいよいよ佳境に入ってきました。

今回も日本代表のワールドカップ出場決定が期待されるところですが、先日アジア予選をTVで見ていて思ったことがあります。

サッカーボールが、選手の手や腕に触れた時に適用されるファール=「ハンド」の反則は、解剖学的にどこからどこまでの範囲をさすのだろう?と。


せっかくですので、改めてルールを調べてみることにしました。

ハンドとは

「ハンド」は、ボールに手で触れてしまう反則(ファール)のことで、正式にはハンドリング(handling)の略称になります。

名詞の hand(ハンド)=手 ではなく、動詞の handle(ハンドル)=手で扱う が本来の語源ということですね。

では、ファールの対象になる「手」とは、どこからどこまでなのか?「腕」や「肩」は対象ではないのか?という疑問が出てきます。

まず、英単語の定義を考えてみます。

 hand (手):手首から指先まで
 shoulder(肩):肩関節を中心に腕の付け根から首にかけて * 肩甲骨を含める用法もあります
 arm(腕) :肩から手首まで * 手首から先までを含める用法もあります

英語と日本語で範囲のニュアンスが少し異なりますが、おおよそhand(手)とarm(腕)がファールの対象になりそうです。

Tシャツ基準

次に公式ルールを見てみます。

サッカーのルールは、競技規則を統括する国際サッカー評議会(IFAB)により決定され適用されるそうですが、ハンドの取り扱いについても定期的に解釈が変更になっているようです。

直近の2021-22シーズンの競技規則改正でも「ハンド」の反則の解釈が変更になっています。

まず、ボールの接触箇所だけについて見てみると、「脇の下から腕の外側へ線を引き、これより下に当たった場合にハンドとなる」ということが明文化されました。

つまり腕と肩の境界線を、脇の下を基準に判断するということになります。

この基準は、半袖Tシャツの袖のようなシルエットから、一部では“ Tシャツ基準 ”とも呼ばれているそうです。写真1参照


写真1


サッカーボールは結構大きいので、ちょうど三角筋の境目付近にボールが当たった時は判断が難しそうですが・・・

とりあえず解剖学的な判断はできそうです。ひとつ疑問が解消されました。

ルール改正について思うこと

IFABの今回の規則改正では他にも改正のポイントがいくつかあり、その1つとして、

「手や腕にボールが当たったとしても、その全てが反則になるわけではない」という原則が明示されました。

つまり、ボールが手や腕に触れても、その時の状況判断次第で得点となるケースが出てくるということですが、ボールに触れたのが意図的なのか偶然なのかは、主審の判断に委ねられる模様です。

現在、VAR(ビデオアシスタントレフェリー)が主要大会では導入されていますが、この改正ポイントについては、テクノロジーよりも主審の判断というヒューマンなスキルに裁定を委ねているところがユニークなところです。


ルール改正については、評議会の構成メンバーの判断や技術、時代背景により解釈が変わるものですから、今後もどんどん複雑化するルールに対して疑問に思ったり、モヤモヤした感情を抱くシーンがあると思います。

ファン目線でいえば、わかりやすくて純粋に競技を楽しめるルールが決まることを願いながら、今後もスポーツ(サッカー)観戦を楽しみたいと思います。