足が攣(つ)る、ってどんな現象?

「足が攣(つ)る」ような、筋肉が動かなくなる経験をたくさんの人がしたことがあると思います。

さて、この筋肉が「つる」という現象はどういう作用なのでしょうか?
金縛りのようにオカルトな現象なのでしょうか?

筋肉が「攣る(つる)」とは、生理学的には筋肉が過剰に収縮し過ぎて、弛緩した状態に戻らない状態のことをいいます。いわゆる筋肉が痙攣している状態です。

こむら返り、とは何処のことか

中でも、足のふくらはぎ部分(下腿三頭筋)の筋肉がつる(痙攣する)ことを、一般的に「こむら返り」といいます。

これはふくらはぎの語源が「こむら(腓)」あるいは「こぶら」と古典的に表現されていたことと関係しているようです。

季節やライフスタイルにも関係があります

筋痙攣は痛みを伴うこともありますので、こむら返りが就寝中に起こると、「痙攣」と「痛み」と「はっきりしない意識」が混ざり合って、かなりのパニックに陥いるはずです。


また、このような経験は、夏などの暑い季節に経験する方が多いと思いますが、いかがでしょうか?

これは気温の上昇に伴い、人がたくさんの汗をかくこと(発汗すること)、と深い関係があります。

気温の高い季節には体温調節のために大量の汗をかきます。

汗には水分だけでなく、ナトリウムやカルシウム、マグネシウムなどのミネラル成分が含まれているため、大量の発汗によりこれらのミネラルが排出されてしまい、補給が追い付かないと体の機能に不具合が生じる事があります。

水分、栄養、適度な運動、回復力・・・どれが不足しても

その一つが筋肉の痙攣です。

筋肉の伸び縮みは電気的な刺激が神経を経由して伝わることで起こりますが、その材料として使われるのが先ほど説明したミネラルとなります。

ですので、体内にある種類のミネラルが不足すると筋肉の収縮と弛緩のバランスが崩れ、収縮だけが一方通行になって、「足がつる」ような痙攣状態の原因となることがあります。


もちろん、いま説明したミネラル不足などの栄養成分のアンバランスの他にも、運動や労働などによる勤続的な筋肉の使い過ぎ(疲労)や、急激な動作による体への過負荷(オーバーロード)も「足がつる(≒筋痙攣が起こる)」主要な要因になります。


また、この他にも、夏場のエアコンによる体の冷え(による血流の悪化、筋肉の硬化)や、年齢(加齢)や運動不足による筋(肉)量の減少なども「足がつる(≒筋痙攣が起こる)」ことの環境要因です。

予防するには、どうすべきか

では、これらの要因を踏まえて、では「足をつる」ことを防ぐためには、どのように対策すれば良いのでしょうか?


1つは、夏場や運動中などの発汗が多いシーンで水分補給を欠かさないことです。

注意が必要なのは、純粋な水分の補給だけでは不足したミネラルの不足を解消できないことがありますので、麦茶やスポーツドリンクなどのミネラル成分が含まれている飲料を補給する必要があることです。
(市販の清涼飲料水には糖分も多く含まれていますので、内容・成分にはお気を付け下さい。)

もう1つは(筋)疲労を蓄積させないということです。

足が疲れたなと思ったら、ストレッチや体操で筋肉をケアする習慣をつけると良いでしょう。

運動後のクールダウンはもちろん、入浴後や就寝前に定期的に(静的な)ストレッチを行う習慣をつけると、疲労の回復だけでなく、心身をリラックスさせ安眠を導入する効果が期待できます。

寝ていて、足がつったら?

もし、就寝中に予期せず足がつってしまったら、どのようにすれば良いでしょうか?

原則としては、筋肉をストレッチ(伸ば)して縮んだ筋肉を元に戻すことになりますが、早く強く伸ばし過ぎると、痛みが強くなる場合もありますので、ゆっくり時間をかけながら行いましょう。


ストレッチの例を2つあげておきますので、よければ参考になさって下さい。

※今回は、いわゆる「ふくらはぎ」(下腿三頭筋)がつった(痙攣した)ケースを想定していますので、
足のその他の部分には該当しないことをご了承下さい。

1.立って行う場合

立ち上がれる余裕がある場合は、次のやり方で行ってみて下さい。



体操のアキレス腱伸ばしの要領で、ふくらはぎを伸ばしてストレッチして下さい。

ゆっくりと時間をかけながら痛みが出ないように、膝や足首の角度を調節しながら行って下さい。

壁などに手をつきながらやると、行いやすくなります。

2.座って行う場合

座ったまま行う場合は、次のように行ってみて下さい。



膝と足首を曲げ、足のつま先を自分の方へ引っ張るようにストレッチして下さい。

この時、強く引っ張りすぎないようにもう一方の手で、自分のふくらはぎを軽くつまんで圧迫しながら行うと良いでしょう。

痛みが出ないように、強さを加減しながらゆっくり行って下さい。


ストレッチにもバリエーションはいろいろありますが、事前にやり方がわかっていると、いざという時に慌てずにすむことがありますので、普段から練習しておくと良いでしょう。

注意事項

気をつけなければならないのは、原因不明で頻繁に足がつるような場合、上記のような筋・骨格、運動器の問題だけではない可能性があることです。

脳・血管の問題や特定の疾患と関連している可能性もありますので、医療機関の受診が必要なケースも考えられます。

当院でも、問診、検査、ドクターの診察により、足の痙攣が疾患に関連する重篤なものか、支障ないものかの判断を行っております。

気になる方は、診察を受診されることをおすすめします。

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みひらRクリニックは、運動器リハビリの一環として、怪我や障害予防のためのストレッチ指導なども行っています。

金沢市内で整形外科クリニックをお探しなら、金沢市笠舞3丁目のみひらRクリニックをお尋ね下さい。


先日8月9日は休診日であったため、本日8月10日の投稿となります。
本日は短内転筋と薄筋の中枢側での超音波画像についての紹介を致します。
短内転筋は薄筋の深層に位置することが、超音波画像でも確認できます。
短内転筋は起始部である恥骨下枝の近くでも、筋線維がしっかりと確認できます。
対して薄筋は中枢側では高エコー像で映り、短内転筋よりも腱が長いことが分かります。
拘縮や可動域制限を考察する事や、運動療法を行う上でも重要な知識であると思います。
またcadaverでの解剖学的研究でも短内転筋と薄筋は結合していることが分かっています。



本日は前距腓靭帯(以下ATFL)の超音波画像描出のための、解剖学的知識を紹介致します。
ATFLは腓骨に付着しますが、腓骨のどの位置に付着しているかを知っておくべきです。
腓骨付着部における骨性ランドマークがあり、外果の前方結節と下方結節の間にfibular obscure tubercle(以下FOT)があります。
丁寧に触診すると、この骨部位も触診できます。
超音波画像でもこの骨隆起を確認できます。
FOTの近位からATFLは起始します。
そのため、ATFL描出のためには、この部位の知識と触診技術が必要になります。
ちなみにFOTの遠位からは踵腓靭帯(以下CFL)が起始します。
そのため踵腓靭帯の描出の際にもFOTは必要な解剖学的知識です。
ATFLとCFLの間に外側距踵靭帯が交通線維として存在します(寺本ら)。



本日は腓腹筋内側頭に肉離れを起こした症例の紹介を致します。
初診時と8W後の経過の超音波画像を添付します。
腓腹筋肉離れは筋腱移行部が好発部位で、腓腹筋内側頭に低エコー像を認めます。
8W後では初診時と比較して、長軸画像及び短軸画像の両方で低エコー像の縮小を確認できます。
画像所見で低エコー像は残存していても、自覚症状や疼痛は早く改善することが多いです。
すなわち、画像所見と自覚症状は必ずしも一致しません。
例えば、画像所見上で病態が治癒していないのに、自覚症状のみで判断し負荷のかかる運動を再開すると、病態悪化を惹起することもあります。
自覚症状のみで治療終了を判断せずに、客観的に病態を画像所見にて判断することが重要です。



これから毎週月曜日に超音波検査についての記事を投稿していきます。
当院では理学療法士が病態把握し、適切な運動療法を実施するために、超音波検査を評価の一つとして実施しています。
Rehabilitative Ultrasound Imagingの頭文字をとり、RUSIという言葉があります。
医師は主に診断やガイド下での注射療法のために超音波検査を使用します。
理学療法士が機能的に使用する目的として以下のものが挙げられます。
1病態理解のために運動療法の選択
2病態可視化~動的評価
3エコーガイド下徒手療法・運動療法
4視覚フィードバック~バイオフィードバック
などの目的で使用しています。

今回は、適切な運動療法を実施するための病態理解に役立った一例を紹介します。
この一例は、画像に示す通り、肩甲下筋腱周囲に血流集積があり、三角筋との間に滑液包貯留の所見を認めました。
超音波画像で所見を認める部位に圧痛を認め、また疼痛発現時の部位とも一致していました。
この状態では炎症を起こしている部位が、CAアーチや肩峰・烏口突起に衝突し、圧が高まり、疼痛惹起することが考えられます。
この状態で疼痛を伴う可動域練習で侵害刺激を入力すると、病態の悪化を惹起します。
局所の状態を把握すれば、自ずと理学療法の方向性が決まります。