運動器超音波検査4
2021年08月10日
先日8月9日は休診日であったため、本日8月10日の投稿となります。
本日は短内転筋と薄筋の中枢側での超音波画像についての紹介を致します。
短内転筋は薄筋の深層に位置することが、超音波画像でも確認できます。
短内転筋は起始部である恥骨下枝の近くでも、筋線維がしっかりと確認できます。
対して薄筋は中枢側では高エコー像で映り、短内転筋よりも腱が長いことが分かります。
拘縮や可動域制限を考察する事や、運動療法を行う上でも重要な知識であると思います。
またcadaverでの解剖学的研究でも短内転筋と薄筋は結合していることが分かっています。
運動器超音波検査3
2021年08月02日
本日は前距腓靭帯(以下ATFL)の超音波画像描出のための、解剖学的知識を紹介致します。
ATFLは腓骨に付着しますが、腓骨のどの位置に付着しているかを知っておくべきです。
腓骨付着部における骨性ランドマークがあり、外果の前方結節と下方結節の間にfibular obscure tubercle(以下FOT)があります。
丁寧に触診すると、この骨部位も触診できます。
超音波画像でもこの骨隆起を確認できます。
FOTの近位からATFLは起始します。
そのため、ATFL描出のためには、この部位の知識と触診技術が必要になります。
ちなみにFOTの遠位からは踵腓靭帯(以下CFL)が起始します。
そのため踵腓靭帯の描出の際にもFOTは必要な解剖学的知識です。
ATFLとCFLの間に外側距踵靭帯が交通線維として存在します(寺本ら)。
運動器超音波検査2
2021年07月26日
本日は腓腹筋内側頭に肉離れを起こした症例の紹介を致します。
初診時と8W後の経過の超音波画像を添付します。
腓腹筋肉離れは筋腱移行部が好発部位で、腓腹筋内側頭に低エコー像を認めます。
8W後では初診時と比較して、長軸画像及び短軸画像の両方で低エコー像の縮小を確認できます。
画像所見で低エコー像は残存していても、自覚症状や疼痛は早く改善することが多いです。
すなわち、画像所見と自覚症状は必ずしも一致しません。
例えば、画像所見上で病態が治癒していないのに、自覚症状のみで判断し負荷のかかる運動を再開すると、病態悪化を惹起することもあります。
自覚症状のみで治療終了を判断せずに、客観的に病態を画像所見にて判断することが重要です。
運動器超音波検査1
2021年07月19日
これから毎週月曜日に超音波検査についての記事を投稿していきます。
当院では理学療法士が病態把握し、適切な運動療法を実施するために、超音波検査を評価の一つとして実施しています。
Rehabilitative Ultrasound Imagingの頭文字をとり、RUSIという言葉があります。
医師は主に診断やガイド下での注射療法のために超音波検査を使用します。
理学療法士が機能的に使用する目的として以下のものが挙げられます。
1病態理解のために運動療法の選択
2病態可視化~動的評価
3エコーガイド下徒手療法・運動療法
4視覚フィードバック~バイオフィードバック
などの目的で使用しています。
今回は、適切な運動療法を実施するための病態理解に役立った一例を紹介します。
この一例は、画像に示す通り、肩甲下筋腱周囲に血流集積があり、三角筋との間に滑液包貯留の所見を認めました。
超音波画像で所見を認める部位に圧痛を認め、また疼痛発現時の部位とも一致していました。
この状態では炎症を起こしている部位が、CAアーチや肩峰・烏口突起に衝突し、圧が高まり、疼痛惹起することが考えられます。
この状態で疼痛を伴う可動域練習で侵害刺激を入力すると、病態の悪化を惹起します。
局所の状態を把握すれば、自ずと理学療法の方向性が決まります。
痛みは後からやってくる!?交通事故後の痛み
2021年07月14日
交通事故の後、しばらくしてから痛みが出るのはどうして?
交通事故に遭遇した時、直後には痛みや不具合を感じなかったのに、何日か経ってから痛みを感じるようになったり、頭痛やめまいなどで体調を崩すケースがあります。
この現象はなぜ起こるのでしょうか?
原因はいろいろと考えられますが、一つには自律神経と呼ばれる神経の作用が考えられます。
体の中で何が起こっているか
事故のような物理的に強い衝撃が体に加わると、人の筋・骨格や軟部組織には強いストレスが生じます。
耐性を超えたストレスは組織に損傷を生じさせ、外傷が生じれば出血に至ることもあります。
本来であれば組織の損傷度合いに応じて、脳が痛みのシグナルを発し、体が緊急状態であることを知らせるはずです。
ところが、あまりに強すぎるストレスは心身を興奮状態に覚醒させ、痛みをあまり感じさせなくすることがあります。
これが自律神経のうち、交感神経といわれる神経が(過剰に)作用している状態です。
自律神経(交感神経)の作用
交感神経が強く作用すると、体は「心拍数、血圧を上昇させる」「瞳孔を拡大させる」など、緊急事態に備えたスタンバイを行います。
また、作用の一つとしてアドレナリンというホルモンを分泌させますが、アドレナリンが大量分泌されると、痛みを感じるセンサー(感覚器)が一時的に麻痺した状態になり、本来感じるべき痛みを感じにくくなります。
格闘技の試合やハードな接触のあるスポーツなどで、選手達が痛みを感じてないかのようにプレー出来るのも、同様にアドレナリンが大量に分泌されているためだと推測されます。
痛みは隠れているだけ・・・
交通事故のような衝撃は、人間にとって命に関わる緊急事態のため、究極の興奮状態が交感神経を優位に働かせ(アドレナリンを大量に分泌させ)、本来感じるはずの痛みを麻痺させてしまうことがあります。
ところが、交感神経の作用はあくまで緊急事態に備えた一時的な作用であるため、興奮状態は長く続くものではありません。
時間が経過し、交感神経による興奮作用がおさまった体は、本来の痛みを感じるようになり、時間差を置いて痛みが発生したような錯覚を起こすことになります。
つまり、事故後に痛みを感じていなかったり、顕著な自覚症状がないからといって、そのままにしておくと、実は体に深刻なダメージを負っていたのに、それが一時的に隠されているだけだったということが考えられるということです。
手遅れにならないためには、どうすべきか
痛みがはっきり現れてから、医療機関を受診した場合、もし受傷部位が大きく損傷していることが判明しても、事故から時間が経過しているため、すぐに行うべきであった対処や処置が遅くなってしまった可能性も考えられます。
ですから、交通事故に遭遇した場合には、適切な検査、診断、治療が行える医療機関(整形外科)に期間を開けずに受診する必要があります。
これは体のためだけでなく、事故の補償手続きや診断書の作成など、後々の手続きのためにも必要な事項です。
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当院は、交通事故の診療にも力を入れて取り組んでいます。
詳細は こちらのページ(>>交通事故について)に記載していますので、よろしければご覧下さい。
交通事故の診療なら、金沢市の整形外科専門医・みひらRクリニックまでご相談下さい。